食欲があまりない時でも、栄養を手軽に取れて食べやすいのが「ぬか漬け」です。ぬか漬けは独特の香りと旨味が食欲をそそり、しかも健康に必要な栄養がしっかり摂れるので、夏バテで食欲が減ったときや、手軽に野菜を取りたい時の対策にぴったりです。しかし現代は米離れが進んでおり、ご飯のお供であるぬか漬けの出番も減少気味と言われています。ところがここ数年、通販やスーパーで「ぬか漬けセット」の売り上げが伸びるなど、ぬか漬けが復活傾向にあるのです。今回は、日本人のソウルフード「ぬか漬け」をテーマに、その栄養と健康効果や、お肌のために、「米ぬか」を使った美容法もご紹介したいと思います。そしてぬか漬けを手作りしている方にとって実は気になる「ネイルをしたままぬか床をまぜていいのか?」という、ぬか漬けとネイルの問題についても合わせてご紹介します!
ぬか漬けの栄養と健康効果
ぬか漬けの原型となる漬け物は奈良時代には既にあったようですが、米ぬかを使ったぬか漬けが広まったのは、白米が普及し出した江戸時代といわれています。現代に入っても、少し前までは各家庭のお勝手にはぬか床があって、食卓にぬか漬けは欠かせないものでした。近ごろはそんな家庭も少なくなり、ぬか漬けは日常的な食べ物ではなくなっています。しかし、食の大切さが叫ばれる今、ぬか漬けの良さが再認識されているのです。昔も今も、変わらぬ高い評価を得ているぬか漬けとは、一体どんな食べ物なのでしょうか。
●栄養の宝庫
そもそもぬか漬けのぬかとは、玄米を精製した時に出る米ぬかのことです。米の胚芽や皮部分が粉末になったもので、ここに米の栄養の90%以上が詰まっているのです。
1.豊富な栄養
米ぬかは、鉄、リン、マグネシウム、カルシウムといったミネラルや、ビタミンB群、ビタミンE、たんぱく質、食物繊維など、健康に欠かせない栄養素が豊富です。中でも、ビタミンB群はエネルギー代謝に欠かせない栄養素なので、疲労回復、夏バテ防止に欠かせません。このビタミンB群の補給に、ぬか漬けは最適の食べ物です。ビタミンB群は水溶性なので、ぬか床の水分を介して、野菜の中にどんどん浸透していくからです。たとえば、ぬか漬けの代表のキュウリはほとんどが水分で、ギネスにも「世界一栄養のない野菜」として登録されています。(ちなみにきゅうりは栄養がないというよりも、カロリーが低いだけで、カリウムやβカロテンなどが含まれています)そんなキュウリもぬか漬けにすると、ぬか床の塩分でキュウリの水分が抜かれ、そこにぬかの豊富な栄養が浸透して、驚くほど栄養価の高い野菜に変身するのです。またぬか漬けは生で食べるため、野菜自体の栄養素も、壊すことなく丸ごと摂ることができます。
2. 米ぬか特有の成分
さらにぬか漬けの効果効能に大きく関係するのが、米ぬかに含まれる次の機能性成分の働きです。
・フィチン酸
ビタミンB群の1種で、抗酸化力が高く、コレステロールの抑制、動脈硬化やがんの予防効果があり、最近は貧血予防効果も報告されています。
・イノシトール
神経細胞に多く存在する成分で、うつ病やイライラ、抜け毛の予防に有効といわれています。また体脂肪の抑制作用があり、動脈硬化予防やダイエット効果も。
・フェルラ酸
抗酸化作用をもつポリフェノールの1種で、老化防止や認知症予防の効果が期待されています。フェルラ酸には、アルツハイマー病の原因物質アミロイドβの分解を促進したり、傷ついた脳細胞を修復する働きがあるのです。また紫外線吸収作用もあることから、日焼け止め成分としても活用されています。
・γ-オリザノール
ポリフェノールの1種で、米ぬか特有の成分。高い抗酸化力で、生活習慣病や認知症の予防、アレルギーの改善、自律神経のバランスを整える効果があります。
3. 発酵で栄養が増える
ぬか漬けが栄養豊富なのは、「発酵食品」であることも大きく関係しています。「発酵」とは、乳酸菌などの善玉微生物によって、食材に含まれる栄養が分解され、新たに有用な成分が作られる働きのことです。ぬか漬けは、野菜についている乳酸菌や酵母菌が、ぬかと野菜の栄養をエサに増殖してできる発酵食品です。同じ野菜も、ぬか漬けにして発酵させると、はるかに栄養価が高まるというわけなのです。またぬか漬けは、発酵の過程で米ぬかのたんぱく質が分解され、旨味成分のアミノ酸ができるため、独特の美味しさが生まれます。
●植物性乳酸菌の働き
ぬか漬けのもう一つの魅力が、発酵によって生まれる「植物性乳酸菌」です。乳酸菌といえばヨーグルトですが、ヨーグルトやチーズなど、牛乳由来の動物性乳酸菌は、欧米の食文化から生まれたもの。それに対して、野菜や果物由来の植物性乳酸菌は、お米中心の食生活の歴史を持つ日本人にとって、相性が良いといわれています。また植物性乳酸菌は、動物性乳酸菌と違い、胃酸に負けずに生きたまま腸に届く、強い乳酸菌です。植物は、乳酸菌が必要とする糖分などの栄養が少なく、さらに寒暖や紫外線など過酷な自然環境に置かれています。そんな条件が、植物性乳酸菌に強い耐性を与えたというわけです。ぬか漬けは、野菜の食物繊維と共に植物性乳酸菌を摂ることができる、便秘解消に理想的な食べ物といえます。このように、血管系疾患や生活習慣病の予防、がん予防、認知症予防、デトックス効果など、多くの健康効果を期待できるのが「ぬか漬け」なのです。
米ぬかで美肌作り
ぬか漬けに使われる米ぬかは、肌に使っても素晴らしい美容効果を発揮します。
●米ぬかの美肌効果
江戸時代には米ぬかが石鹸代わりに活躍し、女性はぬかを布の袋に詰めたもの(ぬか袋)で、顔や体を洗っていたそうです。そして現代もここ数年、米ぬか洗顔ブームが到来し、化粧品でも、米ぬかエキスを使った洗顔料や化粧水、ヘアケア用品が人気となっています。米ぬかで洗った肌は、しっとりスベスベになり、続けるうちにシミやくすみが取れてワントーン明るくなるからです。このような米ぬかの美肌効果は、どうして生まれるのでしょうか。
・保湿作用
米ぬかはふわっとした粉状になっていますが、その20%は良質な「植物性オイル」。また、人間の肌のセラミドと構造がよく似た「米ぬかセラミド」や、「オリザブラン」という水溶性多糖類が含まれています。これら成分が肌のバリア機能を高め、水分を保持してしっとり肌を作ってくれるのです。
・美白作用
米ぬかは米の種皮が微粉砕されたものなので、穏やかなピーリング作用があり、また血行促進作用に優れた「ビタミンE」や「γ-オリザノール」が含まれています。このため古い角質や毛穴の汚れが取れ、血行が良くなることから、ターンオーバーが促進され、シミやくすみが改善されていきます。さらに、γ-オリザノールや米ぬかセラミドにはメラニン生成の抑制作用があり、これらの総合的な働きで美白効果が得られるのです。
・抗老化作用
米ぬかのフィチン酸やフェルラ酸、γ-オリザノールといった「抗酸化成分」は、活性酸素を除去してシミやシワたるみを防ぎます。さらに豊富な「ビタミンB群」が、肌の生まれ変わりを助け、肌を若々しく保ちます。昔から米どころに美人が多いといわれるのも、このような米ぬかの美肌効果があるからだったのです。私たちもぜひ、毎日のスキンケアに米ぬか洗顔を取り入れてみましょう。
●米ぬか美容のやり方
米ぬかは、お米屋さんやスーパー、ネットショップで入手できます。気をつけたいのは、油分を含む米ぬかは酸化しやすいので、新鮮なものを選ぶこと、そして冷蔵保存して早めに使い切ることです。またアレルギーの心配がある方は、事前のパッチテストも忘れないようにしてくださいね。
1. 洗顔
米ぬか洗顔の方法の一つは、ぬか袋を使うものです。木綿の布やガーゼで袋を作り、米ぬかを入れて口を縛ります。これをぬるま湯に浸し、顔に押し当てるようにして洗顔し、よくすすぎます。もう一つは、米ぬかを直接使う方法。スプーン2~3杯の米ぬかを手のひらに取り、水かぬるま湯を加えて適度なゆるさにします。これを優しく揉み込むように顔に伸ばし、最後はぬるま湯で十分洗い流します。こちらの方法は、ピーリング作用があるのでやり過ぎは禁物、週1~2回程度にしましょう。また刺激が心配な方は、白ぬか(化粧ぬか)がおすすめです。白ぬかは、玄米の種皮の一番内側の部分からできるぬかで、ぬか全体の5%しか採れない希少なものです。非常にキメ細かくて低刺激、柔らかい肌当たりで心地よく使えます。
2. パック
肌の疲れを感じた時は、米ぬかパックがおすすめ。小麦粉2に米ぬか3の割合で適量をボウルに入れ、ぬるま湯を少しずつ加えながら、垂れ落ちない程度のペースト状にします。顔に塗り広げて10分ほどおいたら、ぬかが残らないように丁寧に洗い流しましょう。
3. 入浴剤
ぬか袋は、お風呂でも大活躍。石鹸で体を洗った後にぬか袋でマッサージしたり、浴槽に入れてぬかエキスを揉み出せば、全身美容ができます。
ぬか漬けはネイルがもろくなる?
普段からマニキュアやジェルネイルをしており、毎日家事もこなしているという方は、ネイルの持ちが気になりますよね。ネイルの持ちは生活環境によって変わります。水仕事や手作業が多いなど、爪先に刺激を受けやすい生活環境の人はマニキュアやジェルが剥がれやすい、浮いてしまうなどの現象が起こりやすいのです。ぬか床は水分が多いので、ぬか漬けを作るために素手で混ぜているとジェルネイルの持ちが悪くなってしまうかもしれません。またぬか独特の匂いがネイルに染み付いてしまい、洗っても取れないことがあるようです。ネイルの持ちを優先するなら、ビニール手袋をはめてからぬか床を混ぜるようにしましょう。ビニール手袋は使い捨てができるものが衛生的にもよいのでおすすめです。
まとめ
ネイルをしている人で、ぬか漬けづくりのような水分が多いものに触れるときは注意が必要です。水分が爪とマニキュアやジェルの隙間に入ってしまい、持ちが悪くなるかもしれません。家事をするときは手袋をつけるようにクセづけるのがおすすめです。そして「米ぬか」は食欲が無いときや夏バテをしているときの救世主になります。お米で育った日本人にとって、お米から生まれた米ぬかは相性抜群なのです。
・ぬか漬けで夏バテ防止
・米ぬか洗顔で美肌作り
など、ぜひ米ぬかパワーを味方にして、猛暑にも紫外線にも負けない美肌の日々を過ごしましょう!