最近はセルフでジェルネイルを塗ったり、ネイルチップやネイルシールをつけている人が増えています。そもそも、ジェルネイル自体は1990年の後半から2000年代にネイルサロンでメインメニューになりはじめました。このジェルネイル黎明期は、アセトンで溶かすことができない「ハードジェル」が中心で、オフをするには全て削り落とさなくてはなりません。また、ジェルやネイル道具も今と比べると高価なものばかりで、セルフジェルネイルをしている人はほとんどいませんでした。ですが、カルジェルやバイオジェルといったソフトジェルがネイルサロンで使われ始めると、他のネイルメーカーもこぞってソフトジェルを販売しはじめます。その結果、メーカーも競合が増えてプロ用やセルフ用でも購入しやすい価格のジェルネイルが売られるようになったのです。現在はAmazonや楽天といった大手ショッピングサイトで「ジェルネイル」と検索すると、様々なジェルが簡単に購入できます。そこで気になるのは、安いジェルと高いジェルの違いです。もし安いジェルが、爪に良くない成分を使っているとしたら・・・セルフネイルをするのもためらってしまいますよね。どちらも爪に塗ってライトで固めるのは変わりませんが、安いジェルと高いジェルで成分や品質に大きな違いはあるのでしょうか。
安いジェルと高いジェルにはどんな違いがあるの?
セルフネイラーを中心に人気を集めている安いジェルネイルと、ネイルサロンでプロのネイリストが施術に使う高いジェルネイルは、どんな違いがあるのでしょうか?
●安いジェルと高いジェルの主な違い
- 発色の良さ
- テクスチャー
- 日本国内生産か海外製か
- ジェルに含まれている成分
安いジェルと高いジェルは、上記4点を比べると違いがわかりやすいはずです。1つずつ解説してまいります。
違い1:ジェルの発色の良さが違う
カラージェルは、安くても高くても色のバリエーションが豊富に売られています。1つのブランドでも250色以上を取り揃えているのがほとんどではないでしょうか。こういったカラージェルの色味や発色を左右するのは、「顔料」という成分です。この顔料にどんなものを使っているかが重要なポイントで、ジェルの価格の違いや品質に差が出てくる要素の1つです。
●顔料が高級だとカラージェルも高価に
カラージェルは、顔料とクリアジェルを混ぜ合わせて作っています。そして、高級な顔料ほどクリアジェルとの混ざりが良く、安定してきれいな色を再現できます。その一方で、安価な顔料はクリアジェルと混ざりにくく、きれいな色を再現するのが難しい傾向にあります。顔料の品質は安いものと高いもので差があり、顔料の原材料費がジェルの販売価格にも反映されるのです。
そして、高級な顔料はクリアジェルとの混ざりが良いので、顔料が少なくても発色がとてもキレイに出ます。しかし、顔料の原材料費が高いので、ジェルの販売価格も高くせざるをえません。一方で安価な顔料は、色を再現するために量をたくさん使ってクリアジェルに混ぜる必要があります。ですが原材料費が安いので、ジェルの販売価格も安くできるのです。同じ色なら、顔料が多くても安いほうがいいのでは?と思われがちですが、例えば赤でも安いジェルと高いジェルでは色の再現度に違いが出ます。明度や彩度、色同士が混ざった微妙なニュアンスまで出せるのは、高級な顔料を使っているからこそと言えます。
●安いマットなカラージェルは硬化不良になりやすい?
さらに、安価な顔料が沢山入っている安いジェルは「硬化不良」を起こしやすいとも言われているのです。
硬化不良とは、ジェルにライトを当てたが完全に固まりきらず、外側だけが固まり、内部は液体のままという、いわゆる「生焼け」のような状態を差します。硬化不良はクリアジェルやシアーカラージェルではなりにくく、透け感のない色で、特にマットなブラックやホワイトのカラージェルが硬化不良になりやすいです。
クリアジェルと同じようにライトに当てているのに、なぜマットなカラージェルは硬化不良になりやすいのでしょうか?それは、マットカラーに含まれている顔料が、ライトから出る紫外線や可視光線を遮ってしまい、ジェルの内部まで届かなくなるからです。そして前述の通り、安いジェルのマットなカラーほど、色を再現するために沢山の顔料が含まれています。顔料の量が多いが故に、ジェルが硬化不良を起こしやすいというわけです。
●安い顔料=安いジェルは色褪せしやすい
安い顔料は長期間安定した色を再現するのがとても難しいです。そのため、日が経つにつれてだんだんと色褪せてくることがあります。そもそもジェルには、色褪せやすいカラーと、そうでないカラーはありますが、一部の安いカラージェルは、顔料も安価であるがゆえに、爪につけて数日経つと色褪せてしまう商品もあるのです。
高価な顔料を使ったジェルは顔料が劣化しにくいので色褪せにくく、容器にしまって日数が経ってもきれいな色を保ち続けています。つまり、安いジェルは発色だけでなく、長期間きれいな色を保ちにくいと考えてよさそうです。
違い2:ジェルのテクスチャーが違う
ジェルネイルは、商品やメーカーごとにテクスチャーが異なります。例えば、長さ出しができるような硬さのあるジェルや、アートで細かい線が描きやすいカラージェルは、筆に取った時、年度が高くてもったりとしたテクスチャーになっています。
一方で、ベースジェルやミキシングジェルといった商品は、塗った時に爪にさっと広がりやすいようにゆるいテクスチャーになっています。メーカーは商品が使いやすくなるようにそれぞれの商品の粘度を変えているのです。
高いジェルは、顔料の量だけでなくテクスチャーを調整するためのコストをかけられますが、安いジェルはコストをかけられないので、テクスチャーや粘度の調整は二の次になりがち。そのせいで、安いジェルは同じメーカーから販売されているものでも、色によって粘度が違うというのが発生しやすいのです。これは顔料の量や、ジェルの成分が影響している可能性もあります。
粘度の違いは爪への塗りやすさに影響します。ですが、テクスチャーが硬い方が塗りやすいという人もいますし、ゆるい方が使いやすいという人もいるので、最終的には価格ではなく、扱いやすさの好みで選ぶことをおすすめします。これは筆者の体験談ですが、とあるベースジェルを購入して使ってみたところ、粘度が低すぎて爪のサイドに流れてしまい、塗りにくいということがありました。同じメーカーの違うベースジェルを使っても、粘度の差はほとんどなかったので、そのメーカーのベースジェルを使うのは諦めて、他社のベースジェルを使うことにしています。自分にとって塗りやすい粘度か否かは、やはり塗って確かめるしかなさそうです。
違い3:日本国内生産か、海外製かで違う
日本国内で生産されているジェルは価格が高く、海外製のジェルは安い商品が多いです。これは日本国内でジェルを製造するとなると、取り扱っている製造元や企業がまだまだ少ないため、規模も小さくなってしまうからです。小さな規模で低コストのジェルを作るのは難しく、その結果として販売価格も高くなってしまうのです。一方で、中国やインドネシアなど、製造業に強く、大量に生産できる国で作られたジェルは、1つ1つにかかるコストが低くなるので、販売価格も安くすることができます。
しかし、日本のネイリストは海外製のジェルに抵抗があり、高くても国内生産のジェルを使うようにしている人が多いです。これは、海外製のジェルは日本でNGとされている成分が含まれていたり、低品質なメーカーも残念ながら存在するためです。
とはいえ、日本の大手メーカーや販売代理店が売っているジェルは、海外生産であっても成分に問題がないかを検査しています。それに、プロユースのジェルで有名な「カルジェル」は原産国が南アフリカですし、「CHRISTRIO」というメーカーはアメリカ発のブランドで、原産国もアメリカです。日本のネイリストでも愛用者が多いブランドは、必ずしも国内生産というわけではなく、海外製でも高品質なジェルは沢山あるのです。
むしろ、海外製で成分や品質に問題があると思われやすいのは、大手ショッピングサイトで売られているいくつかの商品が原因かもしれません。販売元や製造元が詳しくわからないジェルや、化粧品を専門としていないメーカーが売っているジェルは、安くても品質に問題があったり、せっかく買ったのに使い物にならない!というケースがあるので注意が必要です。安心・安全な商品を手に入れるためにも、製造元や販売元がサイトや商品に明記されているか、きちんと確認してから購入しましょう。
違い4:ジェルに含まれている成分
前述の通り、ジェルネイルに使っていい成分は日本と海外で異なります。そして、今国内で使われているジェルは、自爪に塗って良い化粧品のジェルと、自爪に塗ってはいけない雑貨のジェルの2種類があるのです。
ジェルネイルは自爪に直接つける商品なので、安全性が低いと人体に悪影響を及ぼす可能性があります。そこで、厚生労働省から「爪に塗るネイル商品は、化粧品という分類で販売できるものに限る」というガイドラインが定められたのです。
もともと、ジェルネイルは「化粧品」か「雑貨」という、どちらかの分類で販売されていました。雑貨商品を売るのはそこまでハードルが高くないのですが、化粧品を売るには、販売元や製造元の登録や、規定外の成分が入っていないか確認など、法律で定められた細かい規定をクリアしなくてはなりません。そうしてはじめて、「化粧品登録されたジェルネイル」を売ることができるのです。
そもそも、化粧品として使える成分は薬機法で定められているので、それ以外の成分が少しでも入ってしまうと、爪に塗る商品として売ることはできません。これは低コストでジェルを生産したい企業にとっては大きな課題となります。限定的な成分だけを使って、低コストかつ安全な化粧品のジェルを作るのは非常に難しいのです。そのため、化粧品登録がされているジェルネイルは販売価格が高くなります。
しかし、全てのジェルネイルが化粧品登録されなくてはならないというわけではありません。厚生労働省のガイドラインには、カラージェルやトップジェルはベースジェルを塗ったところに上から塗り重ねるので、直接爪に塗るわけではない=人工爪に塗るもの、という見解になっています。つまり、自爪に塗るベースジェルは化粧品登録されたジェルでなくてはいけませんが、カラージェルやトップジェルはその限りではないので、雑貨のジェルを使用しても良いとされているのです。
そして、前述の通り化粧品登録できる成分には限りがあるので、カラージェルのバリエーションも限界があります。例を上げると、とあるメーカーはベースからカラージェル、トップジェルまで全てのジェルを化粧品登録した上で販売していました。しかし、一部の蛍光色やブラックライトで光る色など、特殊なカラージェルは、使っている顔料が化粧品には使えない成分なので、化粧品登録ができず、雑貨として売ることになったというケースがあります。
●高いプロ用だから安全とは限らない!?
さらに難しいのが、化粧品登録されたジェルを使っていれば絶対に安全とは限らない点です。実際に、化粧品に使える顔料ではないものを配合したまま売り続け、自主回収と販売中止に至った会社があります。それがプロのネイリストや大手のネイルサロン、ネイルスクールでも導入されているメーカーだったので、様々な人から企業に向けて批判が殺到しました。
ネイルは、爪とはいえ人体の一部に装飾をするものです。人の体に使うからこそ、安全に勝るものはありません。それに、安全が保証されない商品を使って、被害を受けるのはジェルを使っている人です。大手メーカーが販売元で、化粧品登録されたジェルネイルでも、本当に安全な商品かどうかを調べるのは難しいですよね。それでも、名も知らぬメーカーの、成分も安全性もわからない安いジェルを使うくらいなら、化粧品として数多くのジェルやネイルアイテムを販売している大手企業の商品を選ぶことをおすすめします。
安全でセルフでもプロでも使いやすいジェルネイルのおすすめ
化粧品登録されているジェルをお探しであれば、メーカーのサイトはもちろん、ジェルネイル検定の指定商品一覧を確認するのもおすすめです
→https://www.nail.or.jp/kentei/goods.html
ジェルネイル検定の実技試験では、ネイリスト協会が定めた基準を満たしている指定商品しか使えません。化粧品登録を出していることはもちろん、様々な基準を定めた上で選定しているとのことで、この一覧から選ぶとひとまず安心ではないでしょうか。以下では、比較的安価で、化粧品登録されているメーカーのベースジェルをご紹介します。
ネイリストのおすすめポイント:プリジェルはプロのネイリストや大手ネイルサロンでも愛用されているネイル用品メーカーです。縮みにくさと定着力が高評価で、薄塗りで塗るのがおすすめ。
ネイリストのおすすめポイント:コスパの良いクリアジェルをお探しならメルティジェルがぴったり。大容量でプロユース商品の中でもかなりお得な価格帯です。ベースやトップ、ミキシングにも使えます。
ネイリストのおすすめポイント:ベティジェルは自爪への密着が良いだけでなく、オフのしやすさも向上したスティッキーベースを販売しています。容量やハケ付き容器が選べるのも便利です。
ネイリストのおすすめポイント:弱酸性で爪に優しいジェルにこだわっているのがシャイニージェルのシリーズです。水分に反応するという成分も含まれているので、水仕事が多くても剥がれにくいという特徴があります。
まとめ
プロのネイリストが使う価格の高いジェルは、安いジェルよりも優れている点が3つあります。
- 成分の安全性が保証されている
- 発色が良い
- 色が褪せにくい
プロはお客さんに施術をするからこそ、高価であっても安全で品質の良いジェルを使っているのです。
しかし、安いジェルだからといって質の悪い商品ばかりではありません。国内の企業がプチプラジェルや100均ジェルを売っているのはまさに企業努力の証拠ですし、使い方と手順を守れば、安全にジェルネイルを楽しめます。実際に、プチプラでこんなにクオリティの高いジェルが売られているなんて!とびっくりするネイリストも多数います。
そして、高いジェルと安いジェルで最も違いが出にくいのは「持ちの良さ」です。ジェルネイルの持ちは、「自爪とジェルの相性」「ジェルを付け替える頻度」「自爪のダメージ」「生活習慣」などが関わってくるので、高いジェルを使えば絶対に持ちがいいというわけではないのです。
とはいえ、爪や人体への安全性は最も重視したいポイントです。製造元や販売元をチェックしつつ、自分の爪に合うジェルネイルを見つけましょう。