2018年に流行語大賞を受賞した「グレイヘア」という言葉は、2020年現在とても一般的になっています。10代~20代の方で流行中のホワイトヘアが「ブリーチして色を抜いた外国人風のヘアスタイル」だとしたら、グレイヘアは「自然と生えてくる白髪を生かしたヘアスタイル」です。艶やかな黒髪は女性の永遠の憧れですが、だいたい30~40代くらいから髪に白髪が混じり始めます。そうなると欠かせなくなるのが「白髪染め」で、白髪染めはやめると伸びてきた白髪がよけい気になります。一度使い出すとなかなかやめることが困難になるのです。また日本では白髪を染めるのは身だしなみの一つという風潮があり、余計に白髪染めをやめるのが難しくなります。そんな中今注目されているのがグレイヘアです。あえて白髪を隠さず、ありのままをおしゃれに楽しむ女性が増えています。現在白髪染めをしている女性も、50代では7割の人が白髪染めをやめたいと考えているそうです。グレイヘアというと高齢の方というイメージもあるようですが、30代くらいから黒や茶色にする白髪染めをやめて、グレイヘアにしたという方もたくさんいますよ。今回はグレイヘアの魅力に迫り、どうすれば素敵なグレイヘアになれるのか、そのポイントを詳しくお伝えしたいと思います。まだまだ白髪なんて関係ない・・・と思っている方も、未来のためにぜひ参考にしてください。
グレイヘアの魅力
グレイヘアとは、白髪混じりの髪が全体に灰色に見えることから生まれた英語です。似た言葉に「ロマンスグレー」がありますが、こちらは白髪混じりの中高年男性に使われる和製英語で、髪を染めることなく自然体で生きる、渋くてダンディな紳士の代名詞でもあります。「白髪は重ねた年齢が醸し出す魅力」という見方から、近年グレイヘアが人気になり出しました。
●グレイヘアで自分らしく
白髪染めは美容院でも自宅でもお金や手間がかかり、面倒なものです。グレイヘアにすれば以下のようなメリットがあります。
・白髪染めの費用、時間が不要になる
・白髪染めによる髪や頭皮へのダメージがなくなる(髪が健康になる)
しかし下記のようなデメリットもあります。
・老けて見られたり、身だしなみがだらしないと思われる
・グレイヘアになるまでの中途半端な状態がイヤ
主なデメリットは見た目の問題や、他人にどう思われるかという点です。そんなリスクを冒すよりはと、結局白髪染めを続ける人が多くなるわけです。そんな中で「グレイヘア」は様々な方の関心を集めています。美容業界では、これまでは「若さ」がキーワードでした。しかし最近は生き方にもおしゃれにも「自分らしさ」を大切にする風潮が高まっています。年齢に逆らわず、年相応の自分を慈しみ楽しむのが自分らしい生き方というわけです。
●白髪染めからグレイヘアに
グレイヘアには独自の美しさがあります。グレイヘアで有名な女性には草笛光子さん、中尾ミエさん、近藤サトさん、結城アンナさんなど、いずれも凛とした美しさ、生き方が印象深い方ばかりです。この方々は、最初は普通に白髪染めをしていて、ある時点で白髪を染めないことを選択しています。白髪染めをするうちにだんだん違和感を持ち、思い切ってやめたところ、自分らしさを取り戻すことができてスッキリしたのだそうです。現在白髪染めに頼っている方々も同様に、この違和感や不自然さといった感覚はあるのではないでしょうか。もし白髪染めをやめるなら、目安になるタイミングがあります。それは白髪が「全体の7割」を超えるくらいになってからです。なぜなら白髪が50%未満と量が少ない場合は、色調が暗くなり老けて見えやすくなるからです。美しく見えるグレイヘアは、白髪と黒い髪の割合が7:3の状態だといわれています。白髪が7割以上だと、明るさと柔らかさのあるグレイ色になり、プラスイメージが高まるのです。
おしゃれなグレイヘアにするには
グレイヘアに成功するには、押さえておきたいポイントが4つあります。
①移行期をどう乗り切るか
白髪染めをやめてグレイヘアを目指す場合、一番の難関がグレイヘアになるまでの移行期です。まず染めの効果が残っている間、伸びてくる白髪の根元だけが白いという、中途半端な状態を我慢する必要があります。しかし染め効果が消えて全体に白髪が表れ出すと、今度は老けて見えることが気になり出します。この期間が耐え切れず、白髪染めに戻ってしまう人も多いのです。次のような工夫をして、おしゃれを楽しみながら、移行期を乗り切ってしまいましょう。
・ウィッグの使用
多少の出費にはなりますが、こんな時こそウィッグが便利です。トップ用の部分ウィッグで、根元の白髪をカバーするだけでもかなり違います。
・メッシュやハイライトを入れる
黒髪部分も明るい色にすると、おしゃれに白髪を目立たなくすることができます。
・ショートヘアにする
ショートヘアは、移行期が短くて済み、お手入れも簡単です。
②元気で健康な髪作り
単なる白髪混じりの髪というだけでは、本当の「グレイヘア」とはいえません。グレイヘアが美しいのは、髪そのものが元気で健康だからこそなので、これまで以上にヘアケアが重要になります。白髪は黒髪よりも光が透けるので、パサつきやうねりが気になりやすいです。お手入れを怠ると、ぼさぼさ感やだらしなさが目立ってしまいます。自分の髪質に合うシャンプーやトリートメントを活用して、潤いやツヤ、コシのある髪を保ちましょう。また健康な髪を作るには、食事も大切です。髪の主成分ケラチンを作るたんぱく質や、髪の成長に不可欠なビタミンB群やビタミンA、ミネラルなどをしっかり摂るようにしましょう。
③グレイヘアに合うメイク
よほど肌に自信がない限り、全くのすっぴんはグレイヘアを寂しく見せてしまいます。凝ったメイクは必要ありませんが、肌を明るく見せることで、全体に健康的な雰囲気になり、白髪が老けて見えることもありません。アイシャドウやアイブロウ、チーク、ファンデーションをきちんと使い、上品で自然な感じのメイクに仕上げましょう。リップは派手過ぎない赤系がおすすめです。グレイヘアとのコントラストで、顔をイキイキと見せてくれます。
④グレイヘアに合うファッション
ファッションはグレイヘアの大人感に合わせ、質感や素材の良い洋服を選ぶようにしましょう。色は淡い色やくすんだ色一辺倒だと、髪の灰色と同調して全体にぼんやりした感じになり、老け感が出てしまうことがあります。たとえば人気のナチュラル系ファッションの王道である、生成りのベージュ・ブラウン系。この色調は、素材の麻や綿の質感と相まって、全体をぼやけさせます。明るい色、ビビットな色が苦手という方もベルト、靴やバッグなどでポイントカラーに使うと、抵抗なくイキイキ感を出すことができます。白髪を老けて見せないためには、姿勢も大事。背中にもったり付いた贅肉や猫背は、それだけで老けて見え、せっかくのグレイヘアを台無しにします。背筋をスッキリ伸ばし、美しい姿勢を心がけましょう。
グレイヘアにこそネイルは濃い目カラーがおすすめ
ファッションやメイクにこだわったら、ネイルもこだわってみましょう!グレイヘアの方におすすめしたいネイルカラーは「ボルドー」や「赤」などの濃いめの色です。どちらも一見派手に見えますが、実はイエベの方でもブルベの方でも合いやすく、シック・モードな服や、ナチュラル・フェミニンな服にもぴったりな万能カラーなのです。手元をよりキレイに見せてくれるので、くすみ感やシワ、シミが気になるという方にもおすすめです。「ボルドーや赤はちょっと強すぎる・・・」という方は、紫や黒など少しシックな色にしてみましょう。紫や黒なら扱いやすくしっかりと映える手元に仕上がりますよ。ちなみに注意したほうがよいネイルカラーは、ベージュやペールピンクなど、肌なじみが良いとされるナチュラルな色味です。グレイヘアでネイルを薄めな色にすると、差し色になる要素が少なく、トータルコーディネートとしてぼんやりとした雰囲気になりやすいのです。また肌の色やハリに自信がない方も、ナチュラルカラーは避けたほうがよいでしょう。手元がくすんで見える可能性があります。手がキレイに見える色が気になる方は、ネイルサロンでネイリストに色選びを相談してみてください。ネイルの色見本と手を合わせながら、その人に合ったカラーを勧めてくれますよ。これまで手元はナチュラル主義だったという方も、思い切って濃い色に挑戦してみてはいかがでしょうか。最初は濃い色をしている自分の手元に見慣れなかったけど、いつの間にか自分の定番カラーになるほどお気に入りになったという方も多いですよ。
まとめ
グレイヘアは白髪染めをやめたから楽、というわけではありません。素敵なグレイヘアであるためには、むしろ手間と時間、努力が必要です。白髪染めは、いわば白髪を隠すということ。そこには、老いを認めたくないという無意識が働いています。厳しい言い方をするなら、自分も他人もごまかすという、ある種の後ろめたさがどこかにあり、気づかないうちにストレスになっている可能性があります。グレイヘアは、そんなストレスからの解放でもあり、自然体で過ごすことの快適さを教えてくれるのです。しかし、何が快適か、どうすれば心地よくいられるかは、人によって違います。白髪は老化現象の一つですが、「若く見られる」ことが快適な人もいれば、年齢に逆らわない「自然体」が心地よい人もいます。自分にとって、「心地よくいられる」のはどちらなのか、もし自然体なのであれば、さっそく今日からグレイヘアに挑戦してみてはいかがでしょうか。上品でエレガントな雰囲気に、あるいは凛とした潔い美しさに、グレイヘアの魅力を楽しめるのも、大人の特権と言えるのではないでしょうか。